「毎日、残業ばかりで疲れが溜まる一方。もしかして働きすぎ?」
このように感じたときは、要注意です。
働きすぎで、心身を壊す一方手前まで来ているか、すでに壊している可能性があります。
そこでこの記事では、働きすぎの定義に加え、働きすぎの原因や解消法について弁護士が解説します。
働きすぎの基準と定義
何時間から働きすぎになるのか、明確な定義はありません。
もっとも、厚生労働省では、「過重労働」という言葉を使い、時間外労働時間・休日労働時間(※)と健康障害リスクの関連性を解説したり、この問題を解消するキャンペーンなどを実施したりしています。
厚生労働省の資料「働き過ぎではありませんか?」によると、時間外労働時間・休日労働時間の合計が月45時間以内であれば健康障害リスク(脳疾患・心臓疾患のリスク)は低いとされています。
そして、時間が長くなるほど徐々にリスクが高まり、「月100時間を超えるまたは、2~6ヵ月で平均月80時間を超える」と、健康障害リスクが高くなるといわれているのです(過労死ライン)。
36協定を締結しても、原則としてその上限は超えることができません(ただし、執筆時点では、医師など、上限時間の規制がない一部の業種もあります)。
※時間外労働とは、原則として、1日8時間、1週40時間を超える労働のことをいいます。また、休日労働とは原則週に1回の法定休日における労働のことをいいます。
「働きすぎ」の感じ方には個人差がある
働きすぎかどうかの感じ方には、以下のような条件・環境によって個人差があります。
- 作業内容
- 仕事の得意・不得意
- 連続勤務の日数
- ノルマの有無
- キャリア(勤続年数)
- 役職
- 体力 など
たとえば、長距離のマイカー通勤などをしている場合、会社の近くから通う人に比べて心身に多くの負担がかかり、働きすぎと感じやすい可能性もあります。
そのため、働きすぎや過重労働かどうかは、単純に時間外労働時間や休日労働などの数字だけでは断定できません。
また、同じチームで作業をしていても、仕事に慣れているキャリア10年の先輩と新入社員では、心身の負担も変わってきます。
したがって、働く人が自身の健康を守るには、厚生労働省の数字や周囲の同僚と比較するだけでなく、自分の気持ちや感覚も大切にする必要があります。
労働者が「働きすぎ」と感じやすくなる原因・環境とは?
以下のような状況に置かれていると、「自分は働きすぎでは?」という疑問が生じやすくなります。
(1)時間外労働時間が長すぎる
時間外労働や休日労働が多い場合、これらの残業時間から見て「明らかな働きすぎ」と感じることが多くなります。
これは自分の過去の残業時間だけでなく、定時退社しているほかのチームの同僚や、友人、家族との比較でも実感できるものです。
先述の厚生労働省の数字と比べることで、健康を害するリスクを実感することもあります。
(2)仕事内容や労働時間と賃金が見合わない
不慣れな仕事を苦労しながら頑張っているのに、自分が思うほどの給料が支払われていない場合に、「働きすぎ」と感じやすくなります。
たとえば、時間外労働をたくさん行っているのに、それに見合った残業代が支払われていないという場合があります。
このケースでは、もともと賃金が安い場合と、会社側の問題で時間外労働時間に見合った残業代が支払われていないパターンが考えられます。
後者の典型例としては、サービス残業です。
(3)体調を崩しがち
働きすぎによる不調は、厚生労働省が注視する脳疾患や心疾患だけではありません。
たとえば、連日の残業で疲れが全く回復しない状況が続けば、すぐに風邪や感染症などにかかりやすくなります。
女性の場合は、働きすぎによるストレスで肌トラブルや月経不順などが生じる可能性もあるかもしれません。
また、働きすぎにより、うつになる人も少なくありません。
過去の数々の事件でもあるように、働きすぎると場合によっては自殺をすることもあります。
(4)生産性が低下している
働きすぎで疲れが溜まったり、寝不足、体調不良が生じたりすると、仕事への集中力やパフォーマンスも低下します。
その結果、本来なら絶対しないはずのミスをしてしまったり、従来の仕事量をこなせなくなったりする可能性も出てきます。
ミスや失敗という点では、マイカー通勤中の交通事故のリスクも高まります。
トラック運転手の居眠り運転事故も起こりやすくなるといえるでしょう。
(5)嫌な仕事をやらされていると感じる
働きすぎで心身ともに余裕がなくなると、仕事へのポジティブなイメージが損なわれ、「嫌な仕事をやらされている」と感じることがあります。
また、集中力の低下で自分らしくないミスを繰り返した場合、自己嫌悪で仕事を辞めたくなってしまうかもしれません。
以前は好きだった仕事に、時間外労働時間の増加とともに悪いイメージが強まった場合、働きすぎが原因の可能性があります。
働きすぎをなくす3つの方法
働きすぎの解消には、以下3つの対処方法が一般的です。
(1)タイムマネジメントを行なう
働きすぎの人のなかには、仕事の優先順位をつけられない人がいます。
この場合、期限が迫っていない仕事を先にやった結果、期限が迫っている仕事に着手するのが期限ギリギリになってしまい、残業して急いで仕事をせざるを得なくなってしまうことがあります。
期限ギリギリに急いで仕事をするとミスも増え、結果その修正作業に余計な時間がかかることも少なくありません。
このケースに該当する場合は、メール返信や資料作成などを含めた全作業を洗い出し、優先順位などをつけていくタイムマネジメントをするのがおすすめです。
タイムマネジメントによって効率よく仕事を進めると、少ない作業時間で多くの成果を出しやすくなります。
(2)早く帰る勇気を持つ
会社や業界によっては、毎日残業をすることが当たり前になっている場合があります。
こうした会社に入った若手は、自分の仕事が終わったことを先輩や上司に言い出せず、付き合いで残業をしてしまうことがあります。
一般論で考えれば、作業がない従業員が定時を過ぎたら無駄な残業をせずに帰宅するのは、残業代の削減という意味でも会社にとっていいことです。
特に、働きすぎで過労や体調不良が生じているときには、翌日以降のパフォーマンスを上げるためにも、勇気を出して早く帰ることが大切です。
(3)会社や上司に相談をする
働きすぎでキャパシティオーバーになっていたり、心身に不調が生じたりしている場合は、それを会社や上司に相談をすることも大切です。過労で生産性が低下し、ミスが頻発している場合、作業要員やスケジュールの調整をしてもらったほうがプロジェクトもトラブルなく確実にまわる可能性があるためです。
働きすぎの相談をすることには、いわゆる過重労働への会社側のスタンスを把握できる利点もあります。
【まとめ】「働きすぎ」だと思ったら適切な対処を
働きすぎに、明確な基準はありません。
しかし、月100時間、2~6ヵ月で「平均月80時間」は過労死するリスクが高いともいわれています。
しかし、働きすぎには、こうした基準や同僚との比較だけでは判断できない個人差もあることに注意が必要です。
明らかな働きすぎですでに体調を崩している方や、現時点で過労死ラインに該当している方は、まずは業務量などについて会社や上司に相談しましょう。
また、働きすぎた残業代に未払いがある場合、弁護士に依頼すれば、あなたに代わり未払い残業代を請求してもらえます。
アディーレ法律事務所では、残業代請求のご相談を受け付けておりますので、残業代の未払いにお困りの方はお気軽にご相談ください。
弁護士に相談に来られる方々の事案は千差万別であり、相談を受けた弁護士には事案に応じた適格な法的助言が求められます。しかしながら、単なる法的助言の提供に終始してはいけません。依頼者の方と共に事案に向き合い、できるだけ依頼者の方の利益となる解決ができないかと真撃に取り組む姿勢がなければ、弁護士は依頼者の方から信頼を得られません。私は、そうした姿勢をもってご相談を受けた事案に取り組み、皆様方のお役に立てられますよう努力する所存であります。